猫本28:『だれも猫には気づかない』★アン・マキャフリー [猫★脇役小説]

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『だれも猫には気づかない』★アン・マキャフリー

中世が舞台の、王子様やお姫様が出てきて、お家騒動や隣国との争いが巻き起こり、最終的には「ハッピーエンド」なファンタジー小説。
ストーリー展開だけなら「よくあるお話」

でも、このお話には、とてもとても賢いニフィという猫が登場し、大活躍をします。
「脇役」にしちゃったけど、「陰の主役」っぽい。
その存在が、料理におけるスパイス的な働きをして、「いつもの料理」が「あれ?なんか一味違う!」風に。

なにせ、ニフィは「名宰相」と言われた老摂政が、若き王に遺した「最大級のプレゼント」であり、実際、彼女の働きによって、王は度重なる難を逃れ、自らにふさわしい妃を見つけ、隣国の危機まで救うのだ!

好感が持てたのは、著者が猫好きというだけあって、ニフィの存在にリアリティーがあること。
「ファンタジー」というジャンルに登場する動物は、猫に限らず、人の言葉が話せたり、超能力的な力を持っていたりして「普通にそこらへんにいる猫」とは違う、特別な存在であることが多いように思う。

ニフィはとても賢いし、人の言葉が理解できるようだけれど、人に話しかけたりはしない。
あくまでも「一匹の猫」として違和感なくそっと動き、ごく普通に「ミャオ」と鳴き、人に甘えたりもする。
結果的には、一つ一つの行動が王を助けることに繋がるのだけれど、「ご都合主義」のニオイがしない。

その活躍ぶりを考えると、ニフィは「気づかれない」はずがない存在なのだけど、あくまでも動く時は目立たずに動いているので、王以外には、その存在の重要性は「気づかれていない」
そこらへんが、タイトルに繋がったのでしょう。
王道ファンタジーなので、どきどきはらはらしながらも安心して読める、読後感の良い1冊です。


だれも猫には気づかない (創元推理文庫)

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猫本27:『にゃらぁきぃ~』★荒木経惟、鶴田一浩他 [猫イラストエッセイ]

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『にゃらぁきぃ~』★荒木経惟、鶴田一浩他

写真家の荒木経惟氏の風貌をご存知なら、表紙だけ見て「ああ」と納得することでしょう。
アラーキーならぬ「にゃらぁきぃ~」なるキャラクターが登場する、写真あり、イラストありの小さな本。

担当者一覧で「写真:荒木経惟」が一番上に書かれているし、にゃらぁきぃ~が写真について語ったりもしているから、「写真集」でもあるんだけれど、猫の写真は一枚だけ。

「猫」を中心に考えると、鶴田さんのイラストと(キャラデザインはまた別の人)、板橋さんて方のストーリーで成り立っていると思うから、イラストエッセイに分類。

ストーリー、というか「ある日の荒木氏の一日」を写真と共に追っていく、ような展開。
最初に「おサカナとメス猫がだれよりも好き!」と書いてある割には、特にその写真が多いわけでもなく、公園の風景、人物、花、空などのモノクロ写真と、にゃらぁきぃ~の一言二言が並んでいる。

けど、「チーズ」の後が「バター」「ヨーグルト」「牛乳」って(笑)

事務所(?)の仲間は猫イラストで描かれていて、サッコ、タミィー、アンチョビがいる。
皆カメラを持っていて、仲良く「サンマ定食」を食べたりも。

1999年出版なので、この時期の「荒木事務所」をご存知の方なら、「ああ、●●さんのことだな」とかわかるんでしょうね。
どういう経緯でこの本が出版されたのかわからないけれど、どこか「記念出版」的な印象を受けます。

私が一番好きなのは、裏表紙で、後姿のにゃらぁきぃ~がサカナの骨を投げ捨てながら、「サンマターイム♪」って歌っている絵なんだけど。
絶対「サマータイム」からきているよなー。こういうところも、ちょっと「内輪受け」っぽい。


にゃらぁきぃ~

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猫本26:『11ぴきのねこ』★馬場のぼる [猫★主役絵本]

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『11ぴきのねこ』★馬場のぼる

これはもう、子供の頃から大~好き。
シリーズ全部好きだし、よく読んだし、読み聞かせもしたし、恥ずかしながら「自前の紙芝居」まで作った覚えがあります。

どのお話も良いのだけれど、最初の1冊のインパクトは、やっぱり大きかったな。
ちなみに、最初に手に取ったのは、実家近くの図書館の児童室でした。

マンガっぽい猫たちと、ユーモラスなストーリー展開は、1967年発売当時には珍しかったんじゃないかと思う。
もうちょっと後、私が一人で図書館に通えるようになった頃だって、こういうタッチの絵はあまりなかったような。

久しぶりに読んだら、1匹だけ縞柄の「とらねこたいしょう(大将)」ってネーミングも、なんだか時代を感じさせる。そもそもは軍隊の階級だし・・・今、たとえば「ガキ大将」って使うんでしょうか?
あ、でも、ラーメン屋のオヤジさんのことを「大将!」と呼んでいるか。

とにかく、その、とらねこたいしょうと10匹の部下?猫が、じいさんねこに教わって、化け物のように大きな魚を捕まえに行くお話なんだけど。
ページをめくるたびに、なんだか笑ってしまうような展開になっていて。

魚が島で寝ちゃうところとか、ナンセンス絵本といえばの長新太さんに通じるなあと思ったり。
子守唄は「ねんねこしゃっしゃり」だし。
表紙の雲の絵が「魚」になっていたりして、芸も細かい。

最後は、お話の展開は想像した通りなんだけど、絵が予想以上に「どかーん!」とくるので、「やっぱり」と思いながらも笑ってしまう。
乏しい読み聞かせ経験から言っても、子供たち皆笑うんだよね。

読む、というよりも、めくるだけで、なんだか楽しい気分になれちゃう絵本です。

11ぴきのねこ

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猫本25:『ダンスがすんだ』★フジモトマサル [猫イラストエッセイ]

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『ダンスがすんだ』★フジモトマサル

タイトルだけだと「猫と何の関係が?」と思われるでしょうが、表紙を見ていただければ、猫と人間がダンスをしているのがわかると思います。
副題は、「猫の恋が終わるとき」

イラストエッセイに分類したけれど、回文とイラストで物語が展開していくので、エッセイではないなあ。
でも、小説でもないし・・・コメント付きイラスト集というのでもないし。

ストーリーも「猫と医師の恋」を中心にしながら、後半は「人」の圧制に反乱を起こす「猫たち」が出てきて、社会風刺的な方向へ。
フジモトさんの動物イラスト作品は、どれもとても可愛いと思うのだけど、お話はどこかブラックだったりするのが面白い。

それにしても、回文だけで物語を展開させてしまうって、かなりの力技。
たとえば、医師の登場シーンは。
「医師らしい」から始まって「カルテ見てるか?」まで病院内が描かれ、家では「妻、待つ」

猫の娘さんの登場シーンは、「闇の飲み屋」で、「この娘(こ)、どこの娘(こ)?」

実際に使った回文以外に、いくつ回文を作ったのだろう?
また、どうやってストーリー展開にあわせていったのだろう?
中には「ちょっと無理が」と思う作品もあるのだけど、私が思いつくのはせいぜい「鍋、食べな」といった程度までなので。

「改ざん破格! 飽きて懲りない脱税医。絶大な利己的悪か? 犯罪か?」 なんて長い回文はとても考え付けない。

しかも、イラストでフォローしているとはいえ、回文を並べたものが「ストーリーとして成り立つ」という点に驚きまくり。
この作品の方が先(2004年)だけど、フジモトさんには、小説家の中村航さんと組んだ回文作品『終わりは始まり』もある
こちらは、より一層「長い・・・よくも思いついたものだ」という文章が並んでいます。
まあ、「マンガ家兼イラストレーター、ときになぞなぞ作家、そして回文作家」と説明されているので、日常的に回文を作って、ストックしているのでしょうね。

ヒロインの黒猫娘以外にも、猫たちがたくさん出てくるので「描き分け」を見るのも一つの楽しみ。
「労働猫」たちが工場に並んでいたり、デモをしていたり、革命を企てたり、海外逃亡したり・・・後半は特に「猫だらけ」になります。

フジモトさんも猫好き作家さんらしく、著者近影には「白猫」が本人より前に写っている。
彼の猫イラストがお好きな方はもちろんのこと、「ことばあそび」「回文」好きな人にもかなり楽しめる本だと思います。


ダンスがすんだ


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猫本24:『猫探偵ジャック&クレオ』★ギルバート・モリス [猫★脇役小説]

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『猫探偵ジャック&クレオ』★ギルバート・モリス

このブログでは、猫本に限定していますが、他の本もそれなりに読んでいます。
けれど、ハヤカワ文庫を読む率は非常に低いかと・・・そもそも翻訳作品自体あまり読まないし、SFは日本の作家でもあまり読まない。

そんな私なので、ハヤカワコーナーにはほとんど足を向けないのですが、この本は「タイトル買い」の「装幀買い」でした。SFじゃなくて「探偵」ってついていたからってこともあります。

29歳のシングルマザー、ケイトは、12歳の息子と2匹の猫を養っている。
クレオ・・・クレオパトラは10キロ近くあるラグドールの雌猫。とても上品でおっとりしていて、食いしん坊。 (切り裂き)ジャック・・・サーバルと家猫の雑種である雄猫。野生の血のせいか、乱暴もので口が悪い。
小さなアパートメントで、猫以外の贅沢なしで暮らすケイトの元に、会ったこともない曾祖母の「豪邸を相続する権利」が転がり込むのだが・・・そのためには条件があった。
「その豪邸に住むこと。彼女が飼っていた多くの動物を世話すること。」そして「もう一人の相続人と一緒に暮らすこと」
もう一人の相続人は、軍隊、刑事経験を経て、作家になろうとしているジェイクだった。

動物好きだけど家事は苦手なケイトと、マッチョなのに蛇が怖くて、料理と生理整頓が得意なジェイクの同居は、最初から波乱含み。
そこに、市長をはじめ新しい隣人たちの思惑が絡み、殺人事件まで起きてしまう。
そしてーーー。
とまあ、興味を持たれた方は読んでいただくとして。

猫たちは「探偵」というには、何を調査したわけでもないし、謎解きをするわけでもないので「ちょっと違うのでは?」と思いましたが、ところどころで会話を交わし、それぞれ魅力的に立ち回る。
たくみな愛情表現で、いつのまにかジェイクをも虜にしてしまうクレオと、「敵」をすばやく攻撃することで、ケイトを守ろうとするジャックの対比も良くて、猫好きとしては、彼らの登場シーンばかりが頭に残ってしまいました。

ストーリー展開は、ミステリとしては今ひとつな気がしたけれど(途中で真犯人の想像もついちゃったし、ぬるい感じ)猫好きとして、また、男女のラブストーリー重視で読むなら、まあまあ楽しめます。
ちょっとミステリテイストの恋愛モノって感じかな~軽めの映画にできそうな。

あと、アメリカだからか、作者がクリスチャンだからかはわかりませんが、聖書のエピソード引用あり。(フェレットの名前は「アビゲイル」だし。)
でも、たぶん、翻訳者の羽田さんが頑張ったのでしょう、
聖☆おにいさん1-6巻 セット (モーニングKC)
を読んでいればクリアできる程度[手(チョキ)]
あまり説教臭くないのは、ジェイクは信者ではないし、それを否定するようには描かれていないからかな。

推理や人間心理を扱った本格派ミステリが好きな人には薦めませんが、「魅力的な猫2匹が登場する、ほどほどに楽しめる軽いミステリ風の本」としては悪くない1冊です。


猫探偵ジャック&クレオ (ハヤカワ・ミステリ文庫 モ)

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