猫本37:『かってうれしいねこいちもんめ』★よしだていいち、ふたまたえいごろう [猫★主役絵本]
『かってうれしいねこいちもんめ』★よしだていいち、ふたまたえいごろう
絵本には違いないのだけれど、物語ではなく「詩」と、木版画のような絵で綴られていく本。
「うちの猫」についての詩がメインなのだけど、時々「そのへんで会う猫」のことも書かれている。
でも、せいぜい半径500メートル以内ぐらいの「ご近所」の話。
14編の詩に、それぞれ絵が1~2,3枚つけられているのだけど、ちょっとレトロな雰囲気が好ましい。
「うそ」という題名の詩が、一番好きです。
長いから、最初の連だけ引用しますと。
なにげなく うしろをふりむくと ひとめをぬすんで ねこが ゆうげのおかずに てを かけていた
添えられた「魚に手を出そうとしている猫」の表情が良いのです。
全体はのぼーっとしていながら、手先には緊張が走り、表情は「あれ?見つかっちゃった?」という感じできょとんとしている。
詩はこの先、叱られた猫が、まるで「いや、私はね、魚を取ろうとしたわけじゃなくて、ほら、ハエがね、ハエがいたから、それを追い払っていたんですよ」と言い訳をしているかのように続いていくのだけれど。
本当に「そんな顔」をしているのです、描かれている猫が。
なんだか微笑ましい光景だなあと思った次第。
1984年の出版なのだけど、もう少し前、「三丁目の夕日」とか「サザエさん」ぐらいの昭和レトロな感じが、詩の内容にも、絵にも出ている気がします。
「縁側に座るおばあちゃんになでられている猫」とか「丸いポスト」とか。
一軒家で放し飼いが普通という時代の印象。
タイトルは平仮名書きなんだけど、「はないちもんめ」にひっかけて、でも「勝って嬉しい」ではなく「飼って嬉しい」猫、ということのようです。
替え歌が全部載っているのかと思ったら、そうではなくて、それがちょっと残念でした。
私はマイナー出版社や地方出版社が好きだったりするので、あまり見たことのない出版社名を見た際には、調べているのですが、この本を出している(いた?)出版社は、なんだか問題があったようです。
でも、出版された本に罪はないと思って紹介しました。
かってうれしいねこいちもんめ (1984年)
猫本33:『ねこのシジミ』★和田誠 [猫★主役絵本]
『ねこのシジミ』★和田誠
仔猫の頃、「シジミが落ちているみたいに見えた」から、シジミと名づけられた猫のお話。
公園で拾われてから、どうやら「和田家」で、平凡ながら幸せな生活を送ったらしい。
なんで和田家かといえば、「ショウちゃん」が持ち帰って、弟が「リッちゃん」で、シジミを抱いている「お母さん」は、平野レミさん(=奥さん)ソックリ。
さらに、絵本の出版は1996年なんだけど、最後のページには「小学生だったショウちゃんが、もうはたちなんだから」という記述があって、トライセラトップスの和田唱さん(和田家長男)は、1975年生まれ。
エピソードとして、みんなはシジミ、シーちゃんと呼ぶのに、お母さんは、シジミ>フジミ>フジオさん>フジサキさんと変化させてしまった、なんて話が出てくると「レミさんなら、そうかもなあ」と思ったり。
話の流れは、シジミの毎日が「ぼく」という一人称で語られるだけで、大きな事件や感動的なことがあるわけではない。
もっとも、ドロボウが入ってお金を盗まれるという「事件」はあったのだけど、そこが強調されているわけでもなく。
「お父さんを起こす」とか「水はお風呂場で飲む」とか「トイレは外でする」とか。
「病気の時はじっとしている」とか「鳥も虫も取らない」とか。
私のお気に入りは「うちのなかで涼しいところをみつけるのが得意」で「ぼくが寝ているところに、お母さんが野菜を置く」というエピソード。同じことをしてる人、いそうですよね。
話が淡々としている分、和田さんの絵(繊細な銅版画だそうで、ビックリ)が引き立ちます。
シジミの表情や動きが、どのシーンにおいても、とてもリアルに描かれている。
たとえば、外から戻りたくてドアをカリカリする様子とか、ザリガニを観察する様子とか、犬を見て毛を逆立てている様子とか。
その一枚を、絵として飾っておきたくなります。
そういえば、この本の編者であるトムズボックスさん@吉祥寺に「オリジナル絵葉書」があったかも。
最後は、トランクの中で寝ている姿とともに、年をとったことが記され「でもまあ、しあわせなまいにちかな、とおもいます。」と締めくくられます。
これは、和田さんが想像した、シジミの「人生(猫生)回想記」なのかも知れない。
私がこの本を好きで、流れはもうわかっているのに時々眺めるのは、衣食住足りていれば、特に何も望まない平凡な日々を「しあわせ」と感じていて、それを肯定してもらえる気がするから。
ドラマや映画にはできそうにないし、「何か生きた証を残したい」タイプの人にはわからないかも知れないけれどね。
ねこのシジミ (イメージの森)
猫本30:『ずるいねこのおはなし』★ビアトリクス・ポター [猫★主役絵本]
『ずるいねこのおはなし』★ビアトリクス・ポター
ポターといえば、『ピーターラビット』シリーズの著者として有名ですね。
数年前に、彼女の生涯を描いた映画「ミス・ポター」を見ましたが、作家として認められるまでは、なかなか大変な道のりがあったようです。
この本も「ピーターラビット」シリーズの一冊に納められています。(No.20)
「ねこ」がタイトルについているのは、もう一冊『こねこのトムのおはなし』(No.4)があり、そちらの方が有名かも知れません。
トムには可愛げがあったけど、この「ずるいねこ」は、「年寄りのずるいねこ」とだけ書かれており、名前がありません。
短くて単純なお話の中で、「ずるい」というか「ちょいと卑怯」で「意地汚く」描かれていて。
ねこのお茶会に呼ばれたねずみは、「律儀で賢く」描かれている。
アニメの「トムとジェリー」に似ているかも・・・って、こちらの方がずっと早く世に出たわけですが、「お間抜けな猫」と「賢いねずみ」という対比は同じ。
猫好きとしては、「ねずみごときに!」とちょっと悔しく、「ふん。猫嫌いが作ったんでしょ」とも思うけれど、ポターの描き方は、猫を貶めてはいない。
このねこは最終的に「お間抜けなこと」になってしまうんだど、それを微笑ましく眺めているような感じ。
猫がねずみを捕るのは、当たり前のことだった時代だし、「ずるい」といっても、そんなに「悪いこと」として描かれてもいない印象。
ただの「ねこ」じゃなくて「年寄りのねこ」なのも、「年をとって、動きが鈍くなったから仕方なく策略を用いて」という風にも解釈できるし。
だから、「ふん!」と思いつつも「猫だって、失敗することはあるのさ!」と、余裕をもって眺めることができるのでした。
ずるいねこのおはなし (ピーターラビットの絵本)
猫本26:『11ぴきのねこ』★馬場のぼる [猫★主役絵本]
『11ぴきのねこ』★馬場のぼる
これはもう、子供の頃から大~好き。
シリーズ全部好きだし、よく読んだし、読み聞かせもしたし、恥ずかしながら「自前の紙芝居」まで作った覚えがあります。
どのお話も良いのだけれど、最初の1冊のインパクトは、やっぱり大きかったな。
ちなみに、最初に手に取ったのは、実家近くの図書館の児童室でした。
マンガっぽい猫たちと、ユーモラスなストーリー展開は、1967年発売当時には珍しかったんじゃないかと思う。
もうちょっと後、私が一人で図書館に通えるようになった頃だって、こういうタッチの絵はあまりなかったような。
久しぶりに読んだら、1匹だけ縞柄の「とらねこたいしょう(大将)」ってネーミングも、なんだか時代を感じさせる。そもそもは軍隊の階級だし・・・今、たとえば「ガキ大将」って使うんでしょうか?
あ、でも、ラーメン屋のオヤジさんのことを「大将!」と呼んでいるか。
とにかく、その、とらねこたいしょうと10匹の部下?猫が、じいさんねこに教わって、化け物のように大きな魚を捕まえに行くお話なんだけど。
ページをめくるたびに、なんだか笑ってしまうような展開になっていて。
魚が島で寝ちゃうところとか、ナンセンス絵本といえばの長新太さんに通じるなあと思ったり。
子守唄は「ねんねこしゃっしゃり」だし。
表紙の雲の絵が「魚」になっていたりして、芸も細かい。
最後は、お話の展開は想像した通りなんだけど、絵が予想以上に「どかーん!」とくるので、「やっぱり」と思いながらも笑ってしまう。
乏しい読み聞かせ経験から言っても、子供たち皆笑うんだよね。
読む、というよりも、めくるだけで、なんだか楽しい気分になれちゃう絵本です。
11ぴきのねこ
猫本21:『ねこのかぞえうた』★せなけいこ [猫★主役絵本]
『ねこのかぞえうた』★せなけいこ (図書館本)
ねこたちの切り絵と共に、「にゃーん、にゃん」で終わる短いオリジナルかぞえうたが「ひとつ」から「とお」まで展開する素敵な絵本。
最初は一匹だったねこが、ふたつ~、みっつ~と最後は10匹になり。
登場するねこも、最初は白、次は黒、それから・・・と皆「柄、色、大きさ」が違う。
柄猫は、なにかの包装紙を使ったのでは?(1匹は羊羹の包みぽい・・・)と思うような柄だったりもして。
どうやら長毛種はいないみたい。
頭韻ことばあそびも兼ねた、短い「うた」と背景にもなっていて、何度読んでも飽きません。
全部書き写すわけにはいかないけれど、ちょっと引用しますと。
ひとつ ひとりで ひなたで ひるね にゃーん にゃん
「ひとつ」の「ひ」で綴られている上に、飛んでいるちょうちょの横には「ひらひら」と書かれ、「ぴよぴよひよこ」も歩いている。
もっとも、この「周囲の書き込み」はなぜか「ひとつ」のページだけなんだけど。
ななつ なまずの ながいひげひっぱり なかしたのだれ にゃーん にゃん
ずいぶん強そうなグレイの猫が、なまずのヒゲを引っ張っていて、それまでに登場した6匹は口を開けてそれを見ている。
「むっつ」に出てきた「むかで」がページ端にちょこっと登場しているのも「続いている」ことがわかって面白い。
「うた」だけあって、声に出して読みたくなります。
実際、読み聞かせをしたら、絶対喜ばれそうな絵本なんだけど、なぜか絶版でなかなか見つけられないのが残念。
せなさんの切り絵って、線が角張ったりもしているし、実際の猫の丸みはないのだけれど、なぜか見事に「猫っぽい」カタチをしていて。
表紙の「ねこのかぞえうた」文字に嵌っている猫たちも、「この手の長さは変だ」とか思うのだけど、一匹一匹が魅力的なカタチをしているなあと思う。
すごく欲しい絵本なんだけど、お高いのな~
ねこのかぞえうた (チューリップえほんシリーズ)