猫本29:『STORY ABOUT CATS―猫だけが知っている』★俣野温子 [猫イラストエッセイ]
『STORY ABOUT CATS―猫だけが知っている』★俣野温子
著者の俣野さんを最初に知ったのは、彼女のイラストによる猫やうさぎをあしらった雑貨で、でした。
「いじわるうさぎ」と「しゃまねこ」というネーミングの通り、可愛いだけじゃない、どこか冷めた視線を持っている動物イラストが新鮮だった。
その頃買った雑貨は、使い倒したか、人にあげたかで、まったく残っていないのだけれど。
この本は、何度かの引越しを経て、今も手元にあります。
内容は、猫本9で紹介した、『大事なことはみーんな猫に教わった』に近い感じで、ちょっとドキッとするような一言や、「そうだよねえ」と頷いてしまうような一文をイラストともに紹介していく形式。
たとえば。
「いい子だからって愛されるわけじゃないね。」
イラストは、大きさも服装(服を着ています)も表情も違う10匹の猫と、ヒト(?)
「猫のように見える人と、人のように見える猫」
イラストは、青年男女のカップル(でも、2人とも黒い影が猫形)と、女に抱かれている猫と、男のポケットから顔を出している猫
たぶん、俣野さん(猫を愛し、猫になりたいとよく思っているらしいヒト)が、猫から受け取ったメッセージをヒト語にしたり、猫やヒトを観察していて思った内容なんだろうな。
ご本人は、エピローグに(カバー折り返しに書かれている)「もっと自由に生きたいとか、しなやかな猫の姿に憧れてないものねだりをするときは、何故か私は、知らず知らずに猫を描いているのです」と、記しています。
イラストと言葉のどちらを先に書いたのか、気になるところ。
「しゃまねこ」に似た、クールな目をした猫もいれば、表紙のように「笑顔」の猫もおり、俣野さんが描く「猫の世界」も堪能できるところも嬉しい。
私のお気に入りは、お洒落な格好をした猫。
なんだか、昔の女優さんのような気品があって、素敵なのです。
もっとも、そのページの一言は「1時間も待っているのに」で、私としては「あまり似合わないなあ」と思うのだけど。
STORY ABOUT CATS―猫だけが知っている (ら・むりーずぶっくす)
猫本27:『にゃらぁきぃ~』★荒木経惟、鶴田一浩他 [猫イラストエッセイ]
『にゃらぁきぃ~』★荒木経惟、鶴田一浩他
写真家の荒木経惟氏の風貌をご存知なら、表紙だけ見て「ああ」と納得することでしょう。
アラーキーならぬ「にゃらぁきぃ~」なるキャラクターが登場する、写真あり、イラストありの小さな本。
担当者一覧で「写真:荒木経惟」が一番上に書かれているし、にゃらぁきぃ~が写真について語ったりもしているから、「写真集」でもあるんだけれど、猫の写真は一枚だけ。
「猫」を中心に考えると、鶴田さんのイラストと(キャラデザインはまた別の人)、板橋さんて方のストーリーで成り立っていると思うから、イラストエッセイに分類。
ストーリー、というか「ある日の荒木氏の一日」を写真と共に追っていく、ような展開。
最初に「おサカナとメス猫がだれよりも好き!」と書いてある割には、特にその写真が多いわけでもなく、公園の風景、人物、花、空などのモノクロ写真と、にゃらぁきぃ~の一言二言が並んでいる。
けど、「チーズ」の後が「バター」「ヨーグルト」「牛乳」って(笑)
事務所(?)の仲間は猫イラストで描かれていて、サッコ、タミィー、アンチョビがいる。
皆カメラを持っていて、仲良く「サンマ定食」を食べたりも。
1999年出版なので、この時期の「荒木事務所」をご存知の方なら、「ああ、●●さんのことだな」とかわかるんでしょうね。
どういう経緯でこの本が出版されたのかわからないけれど、どこか「記念出版」的な印象を受けます。
私が一番好きなのは、裏表紙で、後姿のにゃらぁきぃ~がサカナの骨を投げ捨てながら、「サンマターイム♪」って歌っている絵なんだけど。
絶対「サマータイム」からきているよなー。こういうところも、ちょっと「内輪受け」っぽい。
にゃらぁきぃ~
猫本25:『ダンスがすんだ』★フジモトマサル [猫イラストエッセイ]
『ダンスがすんだ』★フジモトマサル
タイトルだけだと「猫と何の関係が?」と思われるでしょうが、表紙を見ていただければ、猫と人間がダンスをしているのがわかると思います。
副題は、「猫の恋が終わるとき」
イラストエッセイに分類したけれど、回文とイラストで物語が展開していくので、エッセイではないなあ。
でも、小説でもないし・・・コメント付きイラスト集というのでもないし。
ストーリーも「猫と医師の恋」を中心にしながら、後半は「人」の圧制に反乱を起こす「猫たち」が出てきて、社会風刺的な方向へ。
フジモトさんの動物イラスト作品は、どれもとても可愛いと思うのだけど、お話はどこかブラックだったりするのが面白い。
それにしても、回文だけで物語を展開させてしまうって、かなりの力技。
たとえば、医師の登場シーンは。
「医師らしい」から始まって「カルテ見てるか?」まで病院内が描かれ、家では「妻、待つ」
猫の娘さんの登場シーンは、「闇の飲み屋」で、「この娘(こ)、どこの娘(こ)?」
実際に使った回文以外に、いくつ回文を作ったのだろう?
また、どうやってストーリー展開にあわせていったのだろう?
中には「ちょっと無理が」と思う作品もあるのだけど、私が思いつくのはせいぜい「鍋、食べな」といった程度までなので。
「改ざん破格! 飽きて懲りない脱税医。絶大な利己的悪か? 犯罪か?」 なんて長い回文はとても考え付けない。
しかも、イラストでフォローしているとはいえ、回文を並べたものが「ストーリーとして成り立つ」という点に驚きまくり。
この作品の方が先(2004年)だけど、フジモトさんには、小説家の中村航さんと組んだ回文作品『終わりは始まり』もある
こちらは、より一層「長い・・・よくも思いついたものだ」という文章が並んでいます。
まあ、「マンガ家兼イラストレーター、ときになぞなぞ作家、そして回文作家」と説明されているので、日常的に回文を作って、ストックしているのでしょうね。
ヒロインの黒猫娘以外にも、猫たちがたくさん出てくるので「描き分け」を見るのも一つの楽しみ。
「労働猫」たちが工場に並んでいたり、デモをしていたり、革命を企てたり、海外逃亡したり・・・後半は特に「猫だらけ」になります。
フジモトさんも猫好き作家さんらしく、著者近影には「白猫」が本人より前に写っている。
彼の猫イラストがお好きな方はもちろんのこと、「ことばあそび」「回文」好きな人にもかなり楽しめる本だと思います。
ダンスがすんだ
猫本9:『大事なことはみーんな猫に教わった』★スージー・ベッカー [猫イラストエッセイ]
『大事なことはみーんな猫に教わった』★スージー・ベッカー
ずっと前に、相方がプレゼントしてくれた一冊。
私が欲しがったからか、珍しく気をきかせたのかは謎、というか、忘れた
ユニークな猫のイラスト+短い文章で綴られていて、前後になんとなくつながりがある。
たとえば、豪奢なベッドで眠っている猫のイラストに「眠ることをバカにしてはならない」と書いてあり、次のページには、伸びをしている猫3態と「伸びも」という言葉が。
猫と暮らしている人なら「うんうん、ホント猫ってそうだよね」と思うことでしょう。
日本語のリズムの良さは、谷川俊太郎さんの名訳によるもの。
確か、相方に「呼ばれるたびに、いかなくてもいい」とか「電話が鳴っても出ない」と書かれたページを開かれ「そっくりだよね」と言われたのでした。
はい、私は気がむかないと、電話にもインターホンにも出ませんし、返事もしません。
仕事は別だけどさ。プライベートでは、別に構わないじゃない。
人が遊びに来ている時に、電話に出ないと「なんで?」と聞かれることが多いけど、逆に「誰かもわからんのに、なんで(電話には出るものって決めているの)?」と思う。
そんな共感度抜群のページもあれば、「ん?」と思うところもあるけど、全体的には「素晴らしい!」の一言。
『ストレスがたまらない生き方』とか、そういった感じの本を読むぐらいなら、この本の方がずっと役立つ、と、思います。
あと、人に嫌われることを極端に恐れている人とか、メディアの発する情報を100%信じちゃう人なんかにも「一度読んでみなされ」と言いたい。
すごく好きな一冊なので、綺麗めの本を安値で見つけたら買っておいて、プレゼント用にしたりしています。
大事なことはみーんな猫に教わった
大事なことはみーんな猫に教わった(そしてもっと)