猫本25:『ダンスがすんだ』★フジモトマサル [猫イラストエッセイ]

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『ダンスがすんだ』★フジモトマサル

タイトルだけだと「猫と何の関係が?」と思われるでしょうが、表紙を見ていただければ、猫と人間がダンスをしているのがわかると思います。
副題は、「猫の恋が終わるとき」

イラストエッセイに分類したけれど、回文とイラストで物語が展開していくので、エッセイではないなあ。
でも、小説でもないし・・・コメント付きイラスト集というのでもないし。

ストーリーも「猫と医師の恋」を中心にしながら、後半は「人」の圧制に反乱を起こす「猫たち」が出てきて、社会風刺的な方向へ。
フジモトさんの動物イラスト作品は、どれもとても可愛いと思うのだけど、お話はどこかブラックだったりするのが面白い。

それにしても、回文だけで物語を展開させてしまうって、かなりの力技。
たとえば、医師の登場シーンは。
「医師らしい」から始まって「カルテ見てるか?」まで病院内が描かれ、家では「妻、待つ」

猫の娘さんの登場シーンは、「闇の飲み屋」で、「この娘(こ)、どこの娘(こ)?」

実際に使った回文以外に、いくつ回文を作ったのだろう?
また、どうやってストーリー展開にあわせていったのだろう?
中には「ちょっと無理が」と思う作品もあるのだけど、私が思いつくのはせいぜい「鍋、食べな」といった程度までなので。

「改ざん破格! 飽きて懲りない脱税医。絶大な利己的悪か? 犯罪か?」 なんて長い回文はとても考え付けない。

しかも、イラストでフォローしているとはいえ、回文を並べたものが「ストーリーとして成り立つ」という点に驚きまくり。
この作品の方が先(2004年)だけど、フジモトさんには、小説家の中村航さんと組んだ回文作品『終わりは始まり』もある
こちらは、より一層「長い・・・よくも思いついたものだ」という文章が並んでいます。
まあ、「マンガ家兼イラストレーター、ときになぞなぞ作家、そして回文作家」と説明されているので、日常的に回文を作って、ストックしているのでしょうね。

ヒロインの黒猫娘以外にも、猫たちがたくさん出てくるので「描き分け」を見るのも一つの楽しみ。
「労働猫」たちが工場に並んでいたり、デモをしていたり、革命を企てたり、海外逃亡したり・・・後半は特に「猫だらけ」になります。

フジモトさんも猫好き作家さんらしく、著者近影には「白猫」が本人より前に写っている。
彼の猫イラストがお好きな方はもちろんのこと、「ことばあそび」「回文」好きな人にもかなり楽しめる本だと思います。


ダンスがすんだ


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タックン

ご訪問をありがとうございました。
たくさんの猫本のご紹介
猫好きにとっては楽しみです。
私の好きな猫本は 今のところ
内田百閒さん『ノラや』
保坂和志さん『生きる歓び』
そして武田花さんの写真集でしょうか。
by タックン (2011-09-20 20:44) 

のらん

猫本の紹介って、おもしろいですね♪
また、のぞかせていただきます☆
by のらん (2011-09-20 20:58) 

駄々猫

>タックンさん
コメントありがとうございます。
『ノラや』は私も大好きで、トップバッターでした。
武田花さんの写真集も、その内登場予定です。
保坂さんは「猫好き」ということしか知らなかったので、『生きる歓び』探してみます! 教えていただき、ありがとうございます。

>のらんさん
コメントありがとうございます。
「猫」と「本」を好きな方に楽しんでいただければ嬉しいです。
コツコツ書いていくので、よろしくお願いします。
by 駄々猫 (2011-09-20 23:46) 

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