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猫本20:『猫の建築家』★森博嗣 佐久間真人 [猫★美術]

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『猫の建築家』★森博嗣 佐久間真人

挿絵が素敵で分量も多いので「絵本」に分類しても良い気がしますが。
文章がとても思索的で、建築家である猫が「美」の意味を探る展開になっているので「これは一つの芸術論ではないか」と思った次第。

何度生まれ変わっても建築家であるグレイの猫が、ものの「形」と「機能」を観察し、歩き回ったり、建築家学会に出席したり、「動き」や「内側と外側」や「自然」について考えたりしながら、最終的には「美」について、そして「建築家として何を作るべきか」を考えていく。

読んでいて、自分が猫に同化しているような、猫のいる世界を上から俯瞰図として眺めているような感覚に陥った。猫が定義するところの「内側と外側」のどちら側にいるのかがわからなくなった。

私が所有しているのは、単行本ではなく小さな文庫本だというのに、佐久間さんの挿絵が立体的に見えて、こちらに迫ってくるように感じられるからかも知れない。

平易で短い言葉で書かれているが、突き詰めて考えようとすると、思索の沼にはまってしまいそうになる。
たとえば。

世界は、我々と、我々以外、からなっている。 我々以外は「自然」だ。 たとえば、「夜」は「猫」ではない。

「美」は、「形」なのか「機能」なのか、それとも「猫なのか。 興味はつきない。

深く考えてみるも良し、すーっと読み流すも良し。

好き嫌いが分かれる本だと思うので、誰にでもおススメはしないけれど。
建築物が好きで、崩れかけたビルや廃墟にも「美」を感じる私にとっては、なかなか素敵な本でした。

佐久間さんの挿絵の猫や建築物がまた好みなので、できれば単行本で持ちたいな。


猫の建築家 (光文社文庫)

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猫本7:『猫も大好き!現代アート』★広本伸幸 [猫★美術]

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『猫も大好き!現代アート』★広本伸幸

署名入り。宛名も入っているけれど、さして気にならない。
著者は、美術館で長年現代アートの収集、研究にあたってきた方。
「現代美術は難しい」「理解できない」と思っている人のために書いたそうです。

「猫がかつおぶしを好きなように、みんなが現代アートを気軽に好きになってくれるといいな」との思いが込められている。(かつおぶしが嫌いな猫もいるかもですが)

表紙の猫は、上原美千代というアーチストの作品。
この猫が読者に話しかけてくるように、著者が選んだ40点ほどの現代アート作品の簡単な解説をしている。

「現代アート」というタイトルだけど、古代エジプトの出土品も入っている。
「美術はいつの時代も、その時の現代アート、現代美術で、どんな時代にも、そんなアートが好きな人がいた」という主張から、今現在のアート作品だけにはしなかったよう。

フェルメール、モネ、ゴッホ、ラ・トゥールから、ポロック、バスキア、デュシャン、フランク・ステラ。 奈良美智、村上隆・・・その他、著者が「皆にこれを見て欲しい」と思った作品ばかりが、写真+猫の解説で並ぶ。

猫の解説は短くて、初心者に寄り添ったものなので「難しくてわからない」ってことはない。
たとえば、ウルトラマンとウルトラセブンのフィギュアが並んでいる、柳幸典の作品(直島にある)には「たくさんあっていいね、でも、本当にあるのは四分の一だけ、四分の三は鏡に映っているのに気がついたかな?」なんて書かれている。

私の好きな大竹伸朗の作品紹介がないのは残念だったけれど。
価値がどうとか、これは何を表現しているのかとか、ややこしいことは考えずに気楽に「見て」「楽しめれば」良いのだと思えて、アートに詳しいわけでもない一般美術好きとしては、嬉しくなる一冊だった。

猫も大好き!現代アート

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