猫本11:『ブランケット・キャッツ』★重松清 [猫★脇役小説]

ブランケットキャッツ.jpg


『ブランケット・キャッツ』★重松清

2泊3日、毛布付きで、様々な人(家庭)に貸し出される猫たち。
幼い頃から、常にその中で眠ってきた毛布=ブランケットさえあれば、普通、猫にとっては嫌なことである「仮住まい」もOKという設定。

まあ、実際には「猫のレンタル」なんてありえない! と思うけれど、そこは小説、フィクションだから。

短編集なので、毎回「借りる人(たち)」も、「借りられる猫(たち)」も異なり、それぞれの物語が展開する。
一編だけ、猫を主人公にすえた作品があり、そこで、ブランケットキャッツは「選ばれし猫」でありながら「選ばれなかった猫」でもあることが明らかになり、やや複雑な気持ちになった。
でも、その短編では、冒険者の血を持つアメショーが大活躍するので・・・最後には、「そのために選ばれた猫なんだ」って思える。
ペットショップに併設されているという設定なので、色々な種類の猫が出てきて、それぞれの特徴がさりげなく盛り込まれているのも嬉しいサービスかも知れない。

私はもともと重松さんの作品が好きなのだけど、それは、作者が常に「弱い、情けない人間」に優しい目を注いでいるから。嫌な奴だったり、しょうもない人間、悪人を描いても、彼らが決して「そういう面だけではない」ことをわかるように描いてくれるから。

この作品でも、その点は変わらず、いじめの首謀者になった男の子や、横領をしてしまった女性なんかも出てくるんだけど、彼らを真っ向否定はしない。
「どうしてそうなってしまったか」丁寧に、フェアな視点で描かれている。

短編集には、必ずといって良いほどどこかに出てくる「いじめ問題」だけど、これはルポライターとして長くその問題に関わってきたからなんでしょうね。年頃のお子さんを持つ親である友人らによれば「そんな、どこでもイジメがあるわけじゃない」みたいですが。

猫たちの短い滞在を通して、人が己を再認識したり、救いを見出したり、家族が新しい方向へ歩みだしたりと、だいたい良い方向に「解決」が与えられるので、読後感が良い。
そして、猫たちはこの上なく「猫」でありながら、人を導く者のようにも思える。カッコイイ、うん。

表紙と本文中のイラストが、高野文子さんだということも、高野ファンの私には嬉しい。
大事にしたい一冊です。

ブランケット・キャッツ (朝日文庫)

nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 2

ゆうこ

駄々猫さんは、文章を書くのがお上手ですね^^
本や映画の紹介って難しいですよ~
この本まだ読んだ事ないので、本やさんでチェックしたいと思います♪
うちの猫もアメショーだけど「冒険者の血」あるのかな?
by ゆうこ (2011-09-04 07:53) 

駄々猫

お褒めいただきありがとうございます。(テレテレ)
一時期ハマった読書メーターで鍛えられました(!?)

にゃーちゃんにも、きっとありますよ~「冒険者の血」
この本に出てくるアメショーは、幼い兄妹を助けて大活躍する賢いコなんです~是非読んでみて下さい。
by 駄々猫 (2011-09-05 00:23) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。