猫本38:『猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷』★小路幸也 [猫★脇役小説]
『猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷』★小路幸也 図書館本
小路さんは、『東京バンドワゴン』シリーズをはじめ、家族を描いた作品が上手いと思う。
この本も「妻と猫との暮らし」を描くのかと思ったら・・・。
ある日、主人公が家に帰ると「妻が猫になっていた」
ちょっと驚かされる導入部。こういう場合、猫に変化したヒトは「ヒト語を話したり」すると思うが、この猫は違い、名前を呼ばれて「にゃん」とか応えている。
でも、応えるということは・・・ヒト語を理解はしているようだ。
そもそもこの主人公は、陰陽師(とは書かれていないが)のような血筋の蘆野原(あしのはら)一族の長の家に生まれた者。
時代は明治~昭和初期ぐらいの設定だろうか。「戦争の陰」なんて言葉が出てくる。
大学に勤め、蘆野原(あしのはら)研究者である恩師の娘を妻にしたのだが、「血筋」ではない妻の「猫変化」は、必ず「何らかの事件の前触れ」として起きる。
そして、猫になった妻の手助けを得て、同郷の友や仲間と共に、妖(あやかし)による災厄を事前に防いでいく。
普段の妻は「おしとやか」なイメージで、自分からどんどん出て行く感じではないのだけれど、「猫」になった時には、大活躍するのです。とても賢いし。
きっと、著者は猫にこういうイメージを抱いているのでしょう。
きっと、猫好きに違いない。
妖による事件は、それほどの大事ではなく、日常+α程度の範囲で起きる。
サスペンスやホラーっぽくはないし、推理も関係ないので、小規模ファンタジー小説、ということになるのかな。
壮大なファンタジー好きには、「世界、ちっちゃすぎ」って感じられそうだけど、私はこういう「日常生活の中で、ちょっとだけ幻想的」な感じがかなり好き。
時代背景も、現代より、まだ妖が生きる余地があった明治~昭和初期の方が、すんなりその世界に入れる。
この作品、大好きな作家の一人、梨木香歩さんの『家守綺譚』に近い印象を受けました。内容は全然違うけれど、流れている空気感のようものが。
続き物の短編が積み重なって一つの長編になっているような構成で、途中で「猫(妻)の横に仔猫が登場」し、今度は「猫が女の子になる」
血が繋がっていない彼女を、ごくごく当たり前のように受け入れる主人公と妻。
現代が舞台のファミリー小説ではなくても、やはり小路作品には「家族」というテーマが流れているなあと思った。
終盤で、蘆野原は「閉じられる」のだけど、どうやら次の代でまた「開かれる」ような含みがあるので・・・猫から少女になった彼女が成長して活躍する続編を期待してしまいます。
猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷
はじめましてnice&コメントありがとうございました。
私も猫が好きなのでワクワクしながら記事を読ませていただきました。
「大事なことはみんな猫に教わった」や「きょうの猫村さん」など
以前から気になっていた本もあったので参考になりました。
猫イラストの手拭も素敵です。
古本市興味あります今度は春ですね遊びにいってみたいです。
by 黒千鳥。 (2011-10-19 06:03)
これ、私も読みました!
勝手にエッセイだと思って借りました(笑)
「東京バンドワゴン」シリーズ、大好きです。
by smiley (2011-10-19 16:52)
『家守綺譚』ついこの間読みました。
ほのぼの不思議で好きでした。
だから、これも読んでみたいな。
by らいみ (2011-10-19 19:29)
面白そうですね~
今度 図書館で借りて来ようかな。
by ぷらすけ (2011-10-19 20:19)
>黒千鳥。さん
コメントありがとうございます。レスが遅くなってごめんなさい。
猫本といっても色々あるので、参考にしていただければ嬉しいです。
古本市、しのばず一箱の本家は春ですが、あちこちで開催されているので、興味とお時間があれば是非。
by 駄々猫 (2011-10-26 23:10)
>smileyさん
おお!気が合いましたね。エッセイじゃなかったけど、いかがでした?
「バンドワゴン」シリーズは安心して読めますよね。
by 駄々猫 (2011-10-26 23:13)
>らいみさん
『家守綺譚』が好きなら、たぶんこれもお好みにあうかと。
残念ながら蔵書ではないので、お貸しできませんが。
by 駄々猫 (2011-10-26 23:15)
>ぷらすけさん
お近くの図書館にあれば是非!なければリクエストを!?
by 駄々猫 (2011-10-26 23:22)