猫本1:『ノラや』★内田百閒 [猫エッセイ]
『ノラや』★内田百閒
トップバッターは、現在、もっとも繰り返し読んでいる猫本。
どの表紙も素敵なので、文庫版、出版社違い(中公2・福武1)、カバー違いで3種類持っています。
ご存知の方も多いと思うけれど、百閒先生は、やはり猫文学といえばの『我輩は猫である』漱石門下。
でも、もともとは鳥を何羽も飼っていたこともあり、猫は嫌いだったそう。
それが、ひょんなことからいついてしまった野良猫を飼うようになり・・・世話はほとんど細君まかせな割には、どんどん愛情が深まっていき、「ノラ」と名づけたその猫が出て行ってしまってからというもの、凹む凹む凹む・・・、そのウジウジぶりを叱り付けたくなるぐらい、同じことを繰り返し綴っている。
「今日も見つからない、ノラよ、おまえはどこにいるのか」って、何回も繰り返して・・・子どもの日記か!
読んでいると情けなくて、私が妻だったら相当鬱陶しい爺だと思うのだけど、なぜか憎めない。
自分が同じ目にあったら、きっとこういう風になるんじゃないかと思うからかな。
このエッセイ、連載されていたそうなので「毎回、こんな内容で、当時の読者は良かったのか?」とも思いますが、長く残って読みつがれているあたり、やはり並みの作品ではないのでしょう。
「妻に出て行かれたとしても、こんなに嘆かないのでは?」というぐらいに落ち込み、原稿なんかもちろん手につかず、ありとあらゆる手段を使って、お金も使って(借金王のような人だったのですが)、ノラ探しをする百閒先生。
やれやれと思いつつ、その必死さ、ひたむきさにうたれてしまい、内容はわかっているにもかかわらず、何度も読みたくなってしまうのでした。
「ノラや」だけではそれほどボリュームがないせいか、2匹目の猫「クルツ」についての文章も収められていて、そちらも猫への愛情が素直に表現されています。
やや身勝手な気もしますけれどね。
ノラや (中公文庫)
私も内田百閒のファンです。
by ko-cha (2011-08-24 21:43)
ko-chaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
百閒先生はなんだか憎めないですよねえ。
全部読んだわけではありませんが『阿房列車』シリーズなんかも好きです。
by 駄々猫 (2011-08-25 23:05)